丸田淳子
野口病院 病理診断科
髄様癌は甲状腺悪性腫瘍の2-3%を占めるC細胞由来の癌で、血中のカルシトニンとCEAが高値を示す。散発性(70%)と遺伝性(30%)があり、原因遺伝子はRET遺伝子である。遺伝性髄様癌は多発性内分泌腫瘍症2型の部分症で病型として2Aと2Bに分類される。
細胞診で髄様癌と診断すれば、血中カルシトニン測定後、RET遺伝学的検査が実施される。遺伝学的検査において病的バリアントがあれば副腎の検索、治療を優先した後に甲状腺全摘術が施行されるが、病的バリアントがない場合は髄様癌の広がりに応じた手術が施行される。このように、遺伝性の有無により術前検査および切除範囲を含めた治療方針が異なるため、質的診断のできる細胞診が重要な役割を担っている。しかし、髄様癌が稀な腫瘍であることに加えて、細胞像が多様なために特徴的所見を掴みにくく、甲状腺癌の殆どを占める乳頭癌に比べると正診率が非常に低い。
髄様癌細胞と乳頭癌、濾胞癌、低分化癌細胞と比較すると、髄様癌のみにみられる所見と高頻度にみられる所見がある。前者は、1)アミロイド、2)紡錘形の核、3)4核以上の多核の腫瘍細胞、4)類円形、長円形、紡錘形など形状の多様性、5)粗大顆粒状クロマチンであり、後者は、1)疎結合性の出現様式、2)巨大な核、3)核の大小不同 である。
本講演では、上記の所見を中心とした髄様癌の細胞学的特徴、類似所見を示す腫瘍との鑑別、ならびに標本観察時の髄様癌診断の指標となる所見について述べる。