HOME > 最新例会抄録 > “On-ko-chi-shin” : Management of Cytological Specimens

“On-ko-chi-shin” : Management of Cytological Specimens

片山博徳

国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科
保健医療学専攻 臨床検査学分野


 細胞診は,低侵襲かつ迅速な診断法として広く臨床に活用されているが,近年では形態学的診断に加え,免疫細胞化学(ICC)や分子病理学的解析を組み合わせた包括的な診断が求められている.本講演では,「温故知新(On-ko-chi-shin)」をテーマに,従来から培われてきた細胞転写技術を基盤として,臨床医の診断・治療に関するニーズに応えながら展開してきた細胞診材料のマネジメントについて紹介する.細胞転写法は,診断に用いた細胞診標本から目的細胞を他のスライドグラスへ写し取り,追加検査へ応用できる技術である.当施設では,限られた細胞診材料から治療方針決定に必要な情報を得たいという臨床医からの要望を背景に,細胞転写材料を用いたICCおよび分子病理学的解析の検討を進めてきた.乳癌ではER,PR,HER2,Ki-67などのバイオマーカー評価への応用を行い,細胞診断用の材料のみで治療選択に有用な情報を提供できる可能性を示した.また,悪性中皮腫では中皮系・上皮系マーカーを組み合わせたICCに加え,遺伝子解析を導入することで,診断精度の向上に取り組んできた.これらの取り組みは,病理部門だけで完結するものではなく,臨床医との密接な連携のもと,「細胞診材料から何が求められているか」を常に意識しながら実践してきたものである.細胞の形態診断が主体であった細胞診標本を,ICCや分子病理診断へと展開することで,細胞診材料の価値をさらに高めることが可能となった.さらに,日本で培ってきたこれらの技術をインドネシアおよびタイの病理医・細胞検査士と共同で勉強する機会をいただき,特に細胞転写法の実技,ICCへの応用,品質管理について現地で研修会を実施した.この技術交流を通じて,日本の細胞診技術の有用性を国際的に発信するとともに,医療環境の異なる施設においても実践可能な技術であることを共有することができた.本講演では,細胞転写法などの歩みを振り返るとともに,臨床のニーズに応える技術として発展してきた細胞診材料のマネジメントと,ICC・分子病理診断への応用,さらに国際的な技術普及の経験を紹介し,「温故知新」の視点から細胞診の可能性について考察したい.


最新例会抄録一覧へ戻る