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PTAH染色の意義と実践ポイント

中村 博

順天堂浦和病院


 Phosphotungstic Acid Hematoxylin(PTAH)染色は,リンタングステン酸を媒染剤として用いる特殊染色法であり,1897年にMalloryによって報告されて以来,多くの改良が加えられながら現在も病理診断において重要な役割を担っている.PTAH染色は,HE染色では均一な好酸性物質として観察されるフィブリンを明瞭に識別できるほか,横紋筋・心筋の横紋や神経膠線維などを鮮明に描出できることから,組織構造や病態の理解に有用な染色法である.
 近年,免疫組織化学染色の普及により特殊染色を実施する機会は減少しつつあるが,PTAH染色は血栓形成や微小循環障害の評価において,迅速かつ高い組織学的情報を提供できる点で,現在も重要な診断補助法の一つである.
 一方で,本染色法は染色液の熟成状態や酸化状態,染色時間,分別操作などの条件によって染色性が大きく左右されるため,安定した染色結果を得るには原理の理解と適切な品質管理が不可欠である.しかし,日常業務では経験的な手技に依存する場面も少なくなく,再現性の確保が課題となることも多い.
 本講演では,PTAH染色の歴史的背景と染色原理を概説するとともに,フィブリン染色を中心として,良好な染色結果を得るための実践的なポイント,染色不良の原因と対策,さらに日常検査における品質管理について,実際の症例を交えながら解説する.各種病変におけるPTAH染色の有用性を再確認し,特殊染色の価値を日常診断へどのように活用できるかを考える機会としたい.


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