エアーダスターを使用した染色標本の乾燥
【質問事項】1.エアーダスターでの乾燥により細胞の剥離の可能性はあるのでしょうか.
2.細胞の塗抹量により,乾燥不良が生じる可能性はありますでしょうか.
3.今回は細胞診標本での乾燥でしたが,組織標本での使用も可能でしょうか.その際の風の当て方に工夫は必要でしょうか.
4.当院もギムザの色ムラ改善したいのですが,スライドガラスへの吹き付ける距離など,アドバイスはございますか.
5.当院ではギムザ液で染色後,イソプロピルアルコールを使用しています.イソプロピルアルコールで脱水する方法とドライヤー乾燥について,比較や知見についてお持ちでしょうか.
6.エアダスターと比較し,温風ドライヤーの乾燥について知見はございますか.
【回答】
1.今回の検討の細胞診標本の場合,染色後に行う操作であることから,細胞が剥離していればその痕跡が確認できると思いますが,その様な現象は見られませんでした.しかし,スライドガラス上に肉眼でも明らかな凸状になっている塊の部分にエアーダスターの噴出口を近づけ過ぎると,風圧により飛んでしまうことがありますので,注意が必要です.
2.塗抹量によっては乾燥に差が生じることも考えられましたが,乾燥不良が起こることはありませんでした.
3. 組織標本での乾燥も可能です.発表で示した通り,スライドガラスを傾け,スライドガラス上の水分を一方向に押し出す様に行います.この際に,水分が移動した後に乾燥していることを確認しながら行いますが,水分が残らず移動するよう,風量が強過ぎず,弱過ぎずの感覚です.また,局所に集中して風が当たり過ぎないような工夫が必要です.
4. 使用するエアーダスターの風量,噴出口の大きさにより変わるため,吹き付ける距離について明確にすることは難しいのですが,遠目から徐々に近づけてみると良いと思います.また,エアーダスター缶は,ゆっくりボタンを押すことで噴出量を調整することが可能ですので,こちらも試してみると良いと思います.また,風圧で移動した水分がスライドガラスの側面に小さな水滴として付着していることもありますので,スライドガラスは薄くて観察しにくいですが,注意が必要です.
5.ギムザ染色液に含まれる塩基性色素(メチレンブルーおよびアズールB)はエタノールに溶解しやすいため,エタノールより炭素数が一つ多いイソプロピルアルコールで脱水することは多くの施設で行われており,イソプロピルアルコールでの脱水も問題無いと思います.ただし,多数枚のギムザ染色標本をイソプロピルアルコールで脱水する場合,イソプロピルアルコールに水分が多く含まれ,脱水液のpHが酸性に傾くことで,ギムザ染色標本の色彩性に大きな影響がでることが予想されるため,注意が必要と考えます.
(参考文献)病理技術79巻2号P.52-54,P.58-61,P62-67.
6.原因ははっきりしておりませんが,温風ドライヤーを使用して乾燥を行うと,青みが強い標本になることが知られています.一方,今回我々が行った検討では,青みが強くなった標本はありませんでした.
(参考文献)摩嶋夕,他.血液形態検査の標準化3 ―水洗後の乾燥温度がライト・ギムザ染色性に及ぼす影響―.山陽女子短期大学紀要; 2023: 44: 13-18.