HOME > 最新例会抄録 > 子宮頸部におけるp16(新規保険収載の情報)について
片坐 諒
ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
子宮頸部上皮内病変(CIN)の診断は、その後の治療方針を決定する上で極めて重要です。CINのグレード判定では、病理学的観察により、異型細胞の範囲を正確に特定することが求められますが、従来のHE染色のみによる形態学的評価だけでは、CINのグレードや、扁平上皮化生や萎縮などの良性病変との鑑別が困難であるなどの課題があります。
そこで、HPV の持続感染による細胞の腫瘍化を示す代替マーカーであるp16タンパクの免疫組織化学染色は子宮頸部上皮内病変の診断に有用であるとされています。米国 LAST ガイドラインでは、p16 の免疫組織化学染色は推奨される唯一のマーカーとして結論付けられ、WHO分類、子宮頸癌取扱い規約にもその使用が踏襲されました。ベンタナ OptiView CINtec p16 (E6H4)は、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の診断補助を使用目的として薬事承認を取得し、2025年1月より保険適用となりました。HE 染色に加えp16 免疫染色による客観的指標を加えることで、より適切な病理診断が可能となります 。
臨床的有用性は、米国で行われたCERTAIN study で示されており、CIN2 以上を陽性とした場合の一般病理医における診断(全体一致率・陽性一致率)が、HE 染色のみによる診断と比較して統計学的に有意な改善が認められました。これは、p16 免疫染色を併用することで診断の一致率を高め、感度および特異度が向上することを示唆しています 。
p16 免疫染色を適切な症例に用いることは、診断の客観性を高め、HE 染色のみでは判断が難しかった症例においてより的確な診断を支援し、結果として患者の適切な管理に大きく貢献すると考えられます。