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アミロイドの病理組織学的特徴

一萬田正二郎

富山大学大学院医学薬学研究部 法医学講座


 アミロイドーシスとは、βシート構造を有する可溶性蛋白質がさまざまな原因によりアミロイド線維という特異な蛋白質へと変化し、それが細胞外に沈着し、組織障害や機能障害を引き起こす疾患群である。現在もアミロイドーシスの確定診断において、組織学的なアミロイド沈着の同定はゴールドスタンダードである。近年、アミロイドーシスに対する治療法が急速に進歩してきており、組織学的な検討数が今後も増加していくと予測される。
 アミロイドの組織学的な定義は、『コンゴーレッド染色陽性であり、偏光観察下で緑色の複屈折性を示す』ことであり、この染色法はアミロイド沈着の同定に不可欠である。一方、コンゴーレッド染色は繊細な染色法であり、試薬の種類やそのロット番号の違い、染色法、標本の厚さ等が染色性に影響を及ぼし、コンゴーレッドの染色性が弱い症例では緑色調の複屈折性も低下する。また、アミロイド沈着物自体の染色性も前駆蛋白ごとに異なっており、その染色性が非常に弱いことが特徴として知られているものさえ存在する。しかしながら、これらを理解していれば、適切なコントロールとともに染色し、染色性を比較することで、アミロイドの前駆蛋白の種類をある程度推定できる。
 染色強度が強く、染色法が簡便であることから、ダイレクト・ファスト・スカーレット(DFS)染色をアミロイドの染色法として採用する施設も多いと考えられる。一方、DFS染色は、アミロイドの組織学的な定義に含まれていないため、確定診断にはコンゴーレッド染色が不可欠である。これら以外にも、マッソン・トリクローム染色やエラスチカ・ワンギーソン染色は、線維性間質とアミロイド沈着物の鑑別が非常に容易になる特殊染色であり、診断上、非常に有用である。
 本講演では、以上のことを踏まえ、演者がアミロイドーシスの病理学的診断を行う際に注意している点、特に病理標本上で気をつけていることを中心に発表する。


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