HOME > 例会抄録 > 第110回日本病理組織技術学会 > 肺病変を細胞診断する上で必要な画像所見の基本的知識
羽場 礼次
香川大学医学部附属病院 病理診断科・病理部
2022年にIAC-IARC-WHOから呼吸器細胞診報告様式が出版された。これまで国内では肺癌取扱い規約第8版に準拠して陰性、疑陽性、陽性の3段階での報告が一般的とされてきたが、今秋の第9版ではWHOに準拠した形で不十分、陰性(良性)、異型、悪性疑い、悪性の5段階に変更される。
一方、細胞診断では細胞像をみるだけではなく、同時に臨床所見や画像所見などを参考にして集学的な議論を行うことが強調されている。そのため、細胞診専門医や細胞検査士は、病変の細胞診断において臨床医との議論が重要になっている。特に、以前から反応性の異型細胞(杯細胞増生、再生性気管支上皮増生、反応性気管支上皮増生、Ⅱ型肺胞上皮増生、扁平上皮化生など)を悪性とover diagnosisする可能性があることが報告されており、画像などの臨床所見を参考にすることが重要である。
そこで、今回は細胞診断時に陰性(良性)/異型のカテゴリーで出現する可能性のある正常/異型細胞ということで、日常的に頻繁に遭遇する疾患の画像所見を説明する。すなわち、アミロイド―シス、結核症、非結核性抗酸菌症、サルコイドーシス、肺梗塞、肺アスペルギルス症、肺クリプトコッカス症、肺出血、特発性肺線維症/通常型間質性肺炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、放射線肺障害、慢性気管支炎、気管支喘息、肺気腫などである。
また、細胞診断時に最も遭遇する機会のある単発肺結節の良悪性鑑別の読影ポイントを説明する。その時に、pure-GGN(ground-glass nodule), part-solid GGN, solid noduleの理解も大切で、腫瘤周囲にGGNに相当するすりガラス状陰影が存在していればある程度疾患が限られる。この単発肺結節では、AAH、 腺癌、扁平上皮癌、カルチノイド腫瘍、悪性リンパ腫、過誤腫、肺内リンパ節、円形無気肺、限局性器質化肺炎、瘢痕などの画像所見を解説する。
今回の講演を参考に臨床医との議論が深まることを切望する。