仙台赤十字病医誌　Vol.31, No.1, 49-54, 2022

症例報告

重度心身障害者に生じた盲腸捻転の1例

仙台赤十字病院　^1）外科，^2）放射線科

小林　照忠^1）　　佐藤　　純^1）　　金子　直征^1）
佐藤龍一郎^1）　　角川陽一郎^1）　　岡田　秀人^2）
舟山　裕士^1）

A Case of Cecal Volvulus in a Patient with Severe Motor and Intellectual Disabilities

Department of ^1）Surgery and ^2）Radiology, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Terutada KOBAYASHI^1）, Jun SATO^1）, Naoyuki KANEKO^1）, Ryuichiro SATO^1）, Yoichiro KAKUGAWA^1）, Hideto OKADA^2） and Yuji FUNAYAMA^1）

要旨

症例は41歳，女性．脳性麻痺のため前医重度心身障害病棟に入院中であった．夕食後に腹部膨満に気付かれ，その後嘔吐した．経鼻胃管を留置されたが嘔吐，腹部膨満が続き，翌朝のCT検査で腸閉塞と診断されて当院へ救急搬送された．内ヘルニアによる絞扼性腸閉塞の術前診断にて，発症から約20時間後に緊急手術を行った．腹腔鏡で観察後に開腹移行し，盲腸捻転と診断した．捻転解除後に盲腸固定術を行い，術後第7病日に前医へ転院した．術前CT画像を再検討すると腸回転異常を伴う盲腸捻転が示唆された．盲腸捻転は比較的稀な疾患で，長期臥床した高齢者と，若年者では先天異常，脳性麻痺，精神発達遅延などの基礎疾患を有する者が多いとされている．腹部手術既往の無い重症心身障害者（児）の腸閉塞では，盲腸捻転も考慮する必要があり，術前診断は困難であるものの，手術を躊躇すべきでないと思われた．

Key words: 盲腸捻転，移動盲腸，腸回転異常，脳性麻痺，重度心身障害