仙台赤十字病医誌　Vol.31, No.1, 19-23, 2022

総説

小児外科診療における倫理的課題

^1）仙台赤十字病院　小児外科，^2）総合南東北病院　外科

伊勢　一哉^1）　　岡村　　敦^1）　　吉野　泰啓^2）　　

Analysis of Ethical Issues in Pediatric Surgery

^1）Pediatric Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital, ^2）Surgery, Minami Tohoku Hospital

Kazuya ISE^1）, Atsushi OKAMURA^1） and Yasuaki YOSHINO^2）

要旨

我々医療者は，日常診療において起こり得る倫理上の問題に対して，患者に説明し理解を得るために，対象疾患の臨床倫理について熟知する必要がある．そこで，小児外科領域の倫理的課題について，出生前診断，重症染色体異常，誤嚥防止手術，妊孕（にんよう）性温存のそれぞれに関わる問題を取り上げ，原則論に基づいた解決策の検討を試みた．小児外科においては，判断能力のない幼少期も対象になり，医療倫理四原則の中でも本来優先されるべき「自立尊重」に関しては必ずしも優先事項とはならず，「善行」「無危害」「正義」に関しても相反することが示された．その結果いずれの課題でも，医療者と患者の共同意思決定が必要であると考えられた．

Key words: 倫理，出生前診断，重症染色体異常，誤嚥防止手術，妊孕性温存