仙台赤十字病医誌 Vol.30, No.1, 5-17, 2021

総説

食物アレルギーをめぐって
── 離乳食,考え方の変遷と現状 ──

仙台赤十字病院 小児科

浅田 洋司

Thinking over Food Allergies:Transition and Current Situation of Weaning

Department of Pediatrics, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Hiroshi ASADA

要旨

食物アレルギーを減らすために離乳食の開始時期が模索され,また,抗原性の高い食品の開始時期を遅らせる勧告が,長らく行われた.しかしながら,その後,食物アレルギーは減少せず,むしろ増加した.その中でわかってきたことは,① 離乳食の開始を遅らせ過ぎないこと,② 皮膚の管理をしっかり行うこと,③ 離乳食において加熱処理などの食品の加工は,重要であり,抗原性を減らし,摂取する量も適量を選ぶことである.ただし,未だ離乳食の最適量,最適な開始時期については決定できず,現在も模索されている.一旦食物アレルギーを発症した場合は,必要最低限の除去を行う.その上で,時期をみてアレルゲン食品を再開し,経口免疫寛容に導ける症例も増えてきている.一方,ピーナッツの場合,制限するよりも,経口免疫療法の方が危険であると指摘されてきており,今後,さらに研究が進み,リスクを最小限にした治療が発見されることを期待する.


Key words: 食物アレルギー,離乳食,Treg,IgA