仙台赤十字病医誌 Vol.30, No.1, 1, 2021

巻頭言

教育のない病院は一流ではない

仙台赤十字病院院長

舟山 裕士

本号で,仙台赤十字病院医学雑誌は,創刊30年目を迎える.記念すべき第1号の巻頭で当時の佐藤壽雄院長が引用した言葉が,タイトルに記したWilliam Oslerの言葉である.つづけて,「医師は自分の最大の知識と能力にしたがって必要な医療行為を行わねばならない義務が法律的にも倫理的にもあるのである.従って医師はたえず研修を続け,現在の医療水準に追いつくように,それを保つよう努力しなければならない.病院としても教育研修の体制を確立する必要がある」と述べている.このような崇高な精神で医療は支えられてきた.ただし精神論だけでは医療が成り立たないのも現実で,現在の「働き方改革」につながっている.医療を単なる「労働」とは思いたくないが,医療者も人間である限り限界がある.ただし,人間は教育によって向上することができる.
 当院では,4月に教育研修推進室が設置され,着々と成果を挙げている.将来は,職員全ての研修事業に関わるような研修センターを目指している.佐藤先生が考えたような教育のある病院を同じように我々も目指していきたい.
 本医学雑誌の表紙にエンボス加工されている葉脈は,当時の産科の多田和弘先生のデザインによるものである.その由来を創刊号に“表紙の言葉”として記載されておられる.とてもいい一文なのでここに紹介しこの項を締めくくりたい.「仙台赤十字病院のヒポクラテスの樹から,一葉を写した.一葉は万根のために一根は万葉のために.思いやりのハートの囲りに,赤十字七つの原則(人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性)を配した.赤色は金赤という赤十字規定の色である.葉の輪郭は,院長はじめ病院を支えて来られた多くの先輩諸兄姉と診療や編集に精根を盡す古沢先生他一同の炎の如き情熱の象徴でもある.」