仙台赤十字病医誌　Vol.29, No.1, 55-62, 2020

症例報告

Schizophyllum commune（スエヒロタケ）によるアレルギー性気管支肺真菌症の1例

仙台赤十字病院　呼吸器内科

川口　陽史　　徐　　東傑　　千葉　茂樹
清水川　稔　　三木　　誠

A Case of Allergic Bronchopulmonary Mycosis due to Schizophyllum commune

Department of Respiratory Medicine, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Yoji KAWAGUCHI, Dongjie XU, Shigeki CHIBA, Minoru SHIMIZUKAWA and Makoto MIKI

要旨

症例は63歳女性．気管支喘息の既往があり201X年10月に胸部異常陰影を指摘されて当科を受診した．血液検査では好酸球数の増加を認め，胸部CTにて右B8bに沿う浸潤影を認めた．気管支鏡検査にて右B8bに黄褐色の粘液栓を認め，粘液栓の病理細胞診学的検索では，好中球の浸潤とGrocott染色で分岐する菌糸が確認された．後日，遺伝子解析によりスエヒロタケ（Schizophyllum commune:S. commune）を同定したため，S. communeによるアレルギー性気管支肺真菌症と診断した．気管支鏡にてできるだけ気管支粘液栓の吸引を行い，無治療で経過観察をしたところ自然軽快した．アレルギー性気管支肺真菌症や気管支粘液栓の症例でAspergillusが検出されない場合は，Aspergillus以外の真菌であるS. communeなどの可能性を考慮する必要がある．

Key words: スエヒロタケ，S. commune，アレルギー性気管支肺真菌症，ABPM，MIB