仙台赤十字病医誌 Vol.29, No.1, 51-54, 2020

症例報告

スケドスポリウム属によるアレルギー性気管支肺真菌症の1例

仙台赤十字病院 呼吸器内科

千葉 茂樹  田山耕太朗  徐  東杰
川口 陽史  清水川 稔  三木  誠

A Case of Allergic Bronchopulmonary Mycosis Caused by Scedosporium Species

Department of Respiratory Medicine, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Shigeki CHIBA, Kohtaro TAYAMA, Dongjie XU,
Yoji KAWAGUCHI, Minoru SIMIZUKAWA and Makoto MIKI

要旨

症例は喫煙歴のない56歳女性.2ヶ月続く咳嗽と喘鳴のため近医を受診.喘息として治療され喘鳴は改善するも呼吸困難感が悪化し,胸部レントゲンにて右下葉無気肺も認めたため当科紹介.酸素飽和度88%と呼吸不全を認め,胸部単純CTでは右下葉無気肺,両肺野に散在する粘液栓を認めた.気管支鏡検査を行い多量の粘液栓を吸引し好酸球の集積とグロコット染色にて真菌菌糸が多数明瞭に観察され,培養で糸状菌が陽性となった.菌糸末端や分節にレモン様の分生子頭を認めスケドスポリウム属が疑われた.スケドスポリウム属によるアレルギー性気管支肺真菌症と診断しプレドニゾロン60mg/日を開始するも,改善に乏しくボリコナゾール投与を追加した.追加後7日目から症状改善が見られほぼ消失,4週後の肺機能検査でも大きな改善を認めた.
 スケドスポリウム属による肺疾患は多様であり報告が増えている.今後,糸状菌検索や同定はさらに重要となっていくと考えられる.


Key words: スケドスポリウム,糸状菌,アレルギー性気管支肺真菌症,ABPM