仙台赤十字病医誌　Vol.29, No.1, 25-30, 2020

原　著

抗血栓薬服用中の中高齢者における痔核術後出血に関する検討

仙台赤十字病院　外科

廣澤　貴志　　金子　直征　　小林　照忠
角川陽一郎　　舟山　裕士

Risk of Postoperative Bleeding After Hemorrhoidectomy in Middle-aged and Elderly Patients Taking Perioperative Antithrombotic Treatment

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Takashi HIROSAWA, Naoyuki KANEKO, Terutada KOBAYASHI,
Yoichiro KAKUGAWA and Yuji FUNAYAMA

要旨

【背景】痔核手術後の出血は，肛門外科医にとって遭遇する頻度の高い合併症である．【対象】2014年3月から2018年12月までに，当院にて痔核根治手術を受けた60歳以上の患者111例．【結果】抗血栓薬服用例は，45例（41%）であった．早期出血2例は，ともに抗血栓薬服用例ではなく，手術当日に発症し，止血手術を要した．晩期出血5例は全例，抗血栓薬のうち抗凝固薬を服用しており，発症は11.5日目（中央値）であり，1例に止血手術を要した．年齢，性別，痔核切除数，硬化療法剤注射量，Goligher分類，ヘパリン置換の有無について，非出血群（104例）と術後出血群（7例）で有意差を認めなかった．晩期出血群は，非出血群と比較して手術時間が有意に長かった（p<0.05）．【結語】自験では晩期出血例は高率に抗血栓薬を服用しており，特に抗凝固薬は痔核術後の晩期出血の発症に何らかの形で関与していることが示唆された．

Key words: 痔核切除術，術後出血，抗血栓薬