仙台赤十字病医誌　Vol.28, No.1, 59-62, 2019

症例報告

術前採血でaPTT延長を認め一過性に抗リン脂質抗体の陽性を認めた1小児例

^1）仙台赤十字病院　小児科，^2）小児外科，^3）堀田修クリニック

宮川　千弘^1）　　内田　　崇^1）　　山村菜絵子^1）
高橋安佳里^1）　　秋　はるか^1）　　田澤　星一^1）
小澤　恭子^1）　　田中　佳子^1）　　浅田　洋司^1）
伊勢　一哉^2）　　岡村　　敦^2）　　永野千代子^3）

A Case of a 1 Year-Old Boy with aPTT Elongation in The Preoperative Test and Transient Detection of a Antiphospholipid Antibody

^1）Department of Pediatrics, ^2）Department of Pediatric Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital
^3）Hotta Osamu Clinic

Chihiro MIYAGAWA^1）, Takashi UCHIDA^1）, Saeko YAMAMURA^1）, Akari TAKAHASHI^1）,
Haruka AKI^1）, Seiichi TAZAWA^1）, Kyoko OZAWA^1）, Yoshiko TANAKA^1）,
Hiroshi ASADA^1）, Atsushi OKAMURA^2）, Kazuya ISE^2） and Chiyoko NAGANO^3）

要旨

1歳男児．出血傾向の既往歴，家族歴は無し．第X日に熱性痙攣を伴う突発性発疹症に罹患した．第X+28日に鼠径ヘルニアの術前採血目的で当科来院した．採血でaPTT延長（84.3 sec），ループスアンチコアグラント（LA）陽性，抗カルジオリピン抗体（aCL）IgG陽性を認め，第�\因子活性も70%と軽度低下していた．出血傾向の既往ないことから，感染症罹患後の一過性aPTT延長が疑われた．無治療にて経過観察したところ，第X+96日にはaPTT，第IX因子活性は改善傾向を示し，同日にLA，aCL-IgGも陰性化した．第X+110日に鼠径ヘルニアの手術を完遂できた．本症例では塞栓症を来さなかったが，aCL陽性例は塞栓症のリスクがあり注意が必要である．また小児における感染症を契機とした一過性の抗リン脂質抗体産生症例は無治療で改善することが多く，治療前によく治療適応について吟味する必要がある．

Key words: aPTT延長，抗リン脂質抗体，突発性発疹，HHV-6