仙台赤十字病医誌　Vol.28, No.1, 47-51, 2019

症例報告

腸回転異常症を伴った低異型度虫垂粘液性腫瘍の1例

仙台赤十字病院　外科

廣澤　貴志　　金子　直征　　深町　　伸
大村　範幸　　小林　照忠　　大越　崇彦
舟山　裕士

A Case of Low-grade Appendiceal Mucinous Neoplasm with Intestinal Malrotation

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Takashi HIROSAWA, Naoyuki KANEKO, Shin FUKAMACHI, Noriyuki OMURA,
Terutada KOBAYASHI, Takahiko OOGOSHI and Yuji FUNAYAMA

要旨

症例は36歳，女性．腹痛を主訴に当院紹介となった．腹部造影CT検査にて，腸管の拡張像と下腹部正中に腫大した虫垂を認めた．小腸は椎体の右側に，結腸は左側に偏在しており，腸回転異常症を伴う急性虫垂炎，麻痺性腸閉塞症と診断した．保存的加療にて症状は改善し，3ヵ月後に待機的虫垂切除術を施行した．術中所見は，non rotation typeの腸回転異常症であり，虫垂周囲に高度の癒着を認めたため，開腹移行した．切除虫垂の内腔には石灰化を伴う粘液を認め，病理組織診断は低異型度虫垂粘液性腫瘍 （Low-grade Appendiceal Mucinous Neoplasm;LAMN）であった．
　LAMNは粘液の腹腔内漏出により，腹膜偽粘液腫を発症し得るため，en blocに切除することが肝要であるが，腸回転異常症を伴う場合は，腹腔内の癒着や通常と異なる血管走行のため，手術の際には十分な注意が必要である．

Key words: 腸回転異常，虫垂腫瘍，腹膜偽粘液腫，急性腹症