仙台赤十字病医誌 Vol.28, No.1, 3-11, 2019

総説

下部直腸癌の外科治療と術後障害

仙台赤十字病院 外科

舟山 裕士

Surgical Treatment and Postoperative Defecation Disorders in Low Rectal Cancer

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Yuji FUNAYAMA

要旨

下部直腸癌に対する手術術式には,腹会陰式直腸切断術,ハルトマン手術などのストーマ造設術を伴うものと,(超)低位前方切除術や括約筋間直腸切除術などの肛門温存手術とがある.術式を決定するにあたっては,術前より患者の生活様式,職業,信条,術前の肛門機能など多くの要素を考慮に入れる必要がある.ストーマ造設術に対しては,皮膚・排泄ケア認定看護師の技術,ストーマ装具の進歩に加えて身障者制度による経済的支援により術後障害に対するケアが充実してきてはいるものの,患者本人には肉体的にはボディイメージ,継続的ストーマケアの必要性に加えて心理的な負担は大きい.一方,肛門温存手術においては,永久的ストーマは回避できるが,低位前方切除術後症候群による排便障害による日常生活の制限など課題は多く残されている.排便障害に対するケアは立ち後れており,術後の薬物治療,バイオフィードバック治療,骨盤底筋訓練の指導など適切なケアが必要である.


Key words: 直腸癌,低位前方切除術後症候群,括約筋間直腸切除術,仙骨神経刺激療法,バイオフィードバック療法