仙台赤十字病医誌 Vol.28, No.1, 1, 2019

巻頭言

チーム医療の向上と医学雑誌

仙台赤十字病院院長

北   純

要旨

 仙台赤十字病院医学雑誌の第28巻が纏まりましたので,お届けいたします.今回は総説1篇,原著論文3篇,看護研究1篇,症例報告4篇,CPC summary 2篇等が掲載されておりますが,この形は平成4年の創刊号から続いているものです.総説は大腸・肛門領域の第一人者である舟山裕士副院長に「下部直腸癌の外科治療と術後障害」を執筆してもらいました.原著論文には宮城県赤十字血液センター所長の中川国利先生に「宮城県における献血の現状と課題」を投稿いただきました.中川先生は創刊以来毎年ご投稿いただき,感謝申し上げますとともにご努力と熱意に心から敬意を表します.
 診療の中で経験したことを深く分析し,古今(歴史的観点)東西(国際的観点)の医療の評価軸の中で,人道的,倫理的観点も含めてその持つ意味を考え,それを論文や口演で世の中に公表し,遺して批判,評価の場に出すことは自らの進歩になるとともに,社会の進歩にもつながる重要な作業です.私が医師になったころに比べると医療がはるかに複雑になり,日々の行為に時間がとられますが,深く考えたり省みる時間をつくり,「診療を纏める作業」は診療の一部として行うべきものです.
 10年ほど前からチーム医療の重要性がクローズアップされ,他職種が連携してチームを組み,患者さんの抱える疾患や問題に対処するようになっています.多職種からなるチームですから,それぞれの育成過程,職能,役割,活動の場などが異なり,チームとして効果的な活動に仕上げていくには意見の交換や,それなりの工夫や努力が必要です.そしてこの「チームワーク」と同じく重要なことは,各診療科,職種がその専門領域で高いレベルを維持していることです.スポーツでもどこかに弱いポジションがあると,そこから敗北につながります.どの職種でも常に「これで良いのか,本当はどうすべきか」を考えて向上を目指さなければなりません.医療人として力をつける有力な方法の一つが,症例報告を書くことです.今後,多くの職種から当院の医学雑誌に論文が投稿されることを願っております.また,医局の先生方には模範となって多くの論文を投稿していただきたいと思います.
 最後に多忙な中,丁寧な査読と編集作業に当たられた,小林照忠編集委員長と編集委員の皆さん,査読委員の皆さん,編集幹事の大津さんのご尽力に心からお礼申し上げます.