仙台赤十字病医誌　Vol.27, No.1, 81-85, 2018

症例報告

高位気管切開術後の難治性誤嚥に対する誤嚥防止手術の1例

仙台赤十字病院　小児外科

伊勢　一哉　　安藤　　亮　　岡村　　敦

A Case of Surgery Prevent Aspiration for Intractable Aspiration after High Tracheotomy

Department of Pediatric Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kazuya ISE, Ryo ANDO and Atsushi OKAMURA

要旨

嚥下障害による誤嚥性肺炎に対して，一般的に喉頭気管分離術が行われている．気道確保の目的で気管切開術が先行された場合，気管切開の位置により術式の工夫が必要となる．今回我々は，高位気管切開術によるも嚥下障害のため肺炎症状に改善がみられない症例に対して，声門閉鎖術を施行した．症例は，37歳女性．脳性麻痺にて在宅療養中，誤嚥による慢性肺炎から肺膿瘍を来し他院に入院した．頻回の喀痰吸引を要するため輪状甲状靭帯穿刺が施行され，気道確保を目的に気管切開術も施行され，その後誤嚥防止手術を目的として当院へ転院となった．輪状軟骨の高さで気管切開術が行われており，喉頭気管分離術による喉頭側気管断端処理は困難であることから，声門閉鎖術を施行した．本術式は，気管全周の剥離は行わずに術後気管狭窄のリスクを減らし，高位気管切開口を温存するため術後腕頭動脈瘻のリスク低減が期待される．

Key words：誤嚥性肺炎，気管切開術，喉頭気管分離術，声門閉鎖術，重症心身障害児者