仙台赤十字病医誌 Vol.27, No.1, 75-79, 2018

症例報告

新規生物学的製剤のウステキヌマブを用いて寛解導入した
男児クローン病の1例

仙台赤十字病院 総合内科

山下 和良

Successful Treatment with Ustekinumab in a Pediatric Case of Crohn’s Disease

Department of General Internal Medicine, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kazuyoshi YAMASHITA

要旨

症例は13歳,男児.母がクローン病で腸管切除後にインフリキシマブを使用し寛解導入維持中.血便と下痢が出現し,近医を受診した.便培養で病原性大腸菌O-25が検出され,腸管感染症の診断で整腸剤,補液等を投与された.しかし症状が改善しないために,母が通院中の当院を2ヶ月後に受診した.臨床症状,消化管内視鏡検査,病理組織検査等により小腸大腸型クローン病と診断した.5-ASA投与により一時症状は改善傾向を呈したが,2週間後には悪化した.そこでクローン病治療にトップダウン療法1〜5)で使用されているインフリキシマブ,アダリムマブ,ウステキヌマブ6)を考慮し,寛解導入効果と投与間隔の長い新規メカニズムのウステキヌマブを選択した.初回390mgを点滴静注し,8週間後には臨床上の寛解導入となり,90mgの皮下注を施行した.その12週間後には90mgの皮下注と大腸検査を施行した.粘膜治癒には至らなかったが,経過は良好で陸上部の活動を再開した.


Key words:クローン病,ウステキヌマブ,トップダウン療法,インフリキシマブ