仙台赤十字病医誌　Vol.27, No.1, 61-67, 2018

症例報告

経腸栄養剤からアレルギー用ミルクに変更し嘔吐が消失した重症心身障害児の1例

仙台赤十字病院　小児内科

浅田　洋司　　小澤　恭子　　田中　佳子
永野千代子

A Case of 3-Year-Old Retarded Boy with Dietary Allergy, Resolved after Changed from Enternal Diet to Hydrolysed Formulas

Department of Pediatrics, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Hiroshi ASADA, Kyoko OZAWA, Yoshiko TANAKA and Chiyoko NAGANO

要旨

重症心身障害を有する3歳3ヶ月男児が，発熱，喘鳴で入院．入院翌日に解熱したが，経腸栄養剤注入中，溢乳様に嘔吐を繰り返した．経腸栄養剤に含有する蛋白質に対するアレルギーを疑い，ミルクアレルギー用ミルクに変更し，吐き気は数日で消失した．総IgE 1,170IU/ml，特異的IgE:ミルク1.01UA/ml，大豆0.77UA/mlであった．当初，経腸栄養剤に含有する乳蛋白質に対するアレルギーを疑った．3歳9ヶ月時，アレルギー用ミルクから，アミノ酸が主成分の経腸栄養剤（大豆レシチン含有）に変更したところ，下痢が始まり，さらに1ヶ月して嘔吐が始まった．再度アレルギー用ミルクに戻し，下痢と嘔吐は消失した．この経過から，経腸栄養剤に含まれる乳化剤の大豆蛋白質に対するアレルギーを疑った．重症心身障害児は，自覚症状を訴えることが困難で，アレルギー症状の発見が遅れがちになるので，注意が必要である．

Key words：重症心身障害児，大豆レシチン，食物アレルギー，嘔吐，経腸栄養剤