仙台赤十字病医誌 Vol.27, No.1, 53-56, 2018

症例報告

小腸嵌頓をきたした白線ヘルニアの1例

仙台赤十字病院 外科

金子 直征  舟山 裕士  大越 崇彦
小林 照忠  深町  伸  石居健太郎

A Case of Linea Alba Hernia with Impaction of the Small Intestine

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Naoyuki KANEKO, Yuji FUNAYAMA, Takahiko OOGOSHI,
Terutada KOBAYASHI, Shin FUKAMACHI and Kentaro ISHII

要旨

症例は開腹術の既往がない91歳の女性.数年前より臍上部の隆起を自覚し,用手的に還納を行っていたが腹痛を主訴に来院した.臍上部に鶏卵大の腫瘤を認め,CT検査にて白線ヘルニア嵌頓の診断となったが,用手的に還納できず緊急手術を行った.手術所見では臍上部の白線より小腸が脱出しており,嵌頓腸管に壊死を認めなかったために腸管切除は行わず,ヘルニア門は単純縫合で閉鎖し,術後は経過良好で11病日に退院となった.白線ヘルニアは腹壁正中の白線の間隙から発生するヘルニアで,欧米では頻度が高いと報告されているが,本邦では比較的まれな疾患で消化管の嵌頓例は少ない.今回我々は,白線ヘルニアの小腸嵌頓に対して緊急手術を行った1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.


Key words:白線ヘルニア,イレウス,ヘルニア嵌頓,単純閉鎖,腹壁ヘルニア