仙台赤十字病医誌 Vol.27, No.1, 3-9, 2018

総説

移植医療の現状と課題

仙台赤十字病院 小児外科

伊勢 一哉

Current Status and Issues of Transplant Involving Pediatric Surgeons

Department of Pediatric Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kazuya ISE

要旨

移植医療は,現代社会において臓器不全患者に対する最終的な外科治療として定着している.近年,移植後の生存率およびグラフトの生着率は,医療技術の進歩と免疫抑制剤の開発により向上しており,それは臓器提供という尊い行為の上に成り立つものである.小児外科として関わりが多い移植分野としては,既に確立され一般化したとも言える肝移植と,本邦においては未だ移植症例数の少ない小腸移植が挙げられる.これらは,適応疾患,臓器提供,症例数に違いがみられるものの,臓器不足による移植治療の遅滞化,脳死移植の受け入れ,慢性拒絶の制御方法など,移植の成績向上を妨げる共通の問題が存在する.現在行われている移植医療の現状と問題点について概説する.


Key words:肝移植,小腸移植,臓器不足,脳死移植,拒絶反応