仙台赤十字病医誌 Vol.27, No.1, 1, 2018

巻頭言

研究報告のめざすもの

仙台赤十字病院院長

北   純

要旨

仙台赤十字病院医学雑誌第27号が完成しましたので,お届けいたします.当院の職員が日々の診療や活動の中での経験や取り組みをまとめた貴重な記録です.ご一読いただき,ご意見やご批判を頂けましたら有難く存じます.
 昔,コロンブスの航海日誌は大変高額な値が付いたと言われますが,貴重な経験はしっかりと記録し共有される必要があります.私が教えを受けた先輩の中には,自分の診療の結果を発表するような恥ずかしいことはとてもできない,と言う人もいましたが,単に結果を誇るのではなく,自分たちの行っていることを古今東西の論文と読み比べて,自身の立っているところを確認し,次のステップを考えることは重要なことです.研究報告の歴史は17世紀半ばにRoyal Society(英国王立協会)が世界最古の科学学会として始まっており,1665年には医学を含む最古の学術雑誌第1巻がこの協会から刊行されています.経験や研究結果を多くの人で吟味する歴史は長いのです.
 私たちが経験を纏めたり研究を行うのは,すべて患者さんが良くなるために行っていると言えます.研究や報告を行うときは,それが患者さんのためになっているか,世の人にとって重要かを考えればその筋道や目標は明快で,考えるべきこと,主張すべきことは決まってきます.医療従事者はこのような方向で,常に研究テーマを持ち,研究を発表し,学術的な検討の場で評価を受けて進歩,向上を心がけることを大事にしなければなりません.
 当院では昨年度から倫理委員会に東北大学大学院医学系研究科,医療倫理学分野の浅井篤教授をお迎えし,研究計画や論文作成における倫理的な検討を充分行える体制にしております.今後,診療や院内活動の素晴らしい成果や,診療に影響を与える論文が多数掲載されることを期待したいと思います.
 最後に忙しい診療の傍ら,査読や編集に多大な努力を注いでくださった編集委員長の小林照忠先生他,編集にかかわった職員の皆さんに心から感謝の意を表します.