仙台赤十字病医誌 Vol.26, No.1, 93-100, 2017

症例報告

腫瘍随伴症候群として蛋白尿を示した卵巣成熟嚢胞性奇形腫の1例

仙台赤十字病院 1)小児科,2)小児外科,3)宮城県立こども病院 小児外科

高橋安佳里1)  木越 隆晶1)  永野千代子1)
安藤  亮2)   遠藤 尚文2)3)

Asymptomatic Proteinuria in a Patient with Ovarian Teratoma

1)Department of Pediatrics, 2)Department of Pediatric Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital,
3)Department of Pediatric Surgery, Miyagi Children’s Hospital

Akari TAKAHASHI1), Takaaki KIGOSHI1), Chiyoko NAGANO1),
Ryo ANDO2) and Naobumi ENDO2)3)

要旨

症例は11歳3ヶ月女児.11歳3ヶ月時,初めて学校検尿で蛋白尿を指摘され近医泌尿器科受診,右卵巣腫瘤を認めたため当科紹介.1.09g/gCrの蛋白尿を示したが血尿は見られず,腎機能は正常範囲内,腹部MRI画像で最大径58mmの右卵巣奇形腫の存在を確認した.蛋白尿に対し,アンギオテンシンII受容体拮抗薬を投与し経過観察したが,卵巣腫瘍径が拡大し蛋白尿も増加した為,11歳11ヶ月時に腹腔鏡補助下右卵巣腫瘍核出術および右腎針生検を施行した.腫瘍病理診断は卵巣成熟嚢胞性奇形腫であり,腎病理像は光顕では微小糸球体変化にとどまり,一方,電顕では糸球体上皮細胞足突起の癒合を認めた.術後蛋白尿は著明に減少し,13歳6ヶ月時に陰性化した.児は卵巣成熟奇形腫の腫瘍随伴症候群として無症候性蛋白尿を呈した可能性があると考えられたが,稀な症例であり,文献的考察を加えて報告する.


Key words:腫瘍随伴症候群,学校検尿,蛋白尿,卵巣奇形腫,糸球体上皮細胞