仙台赤十字病医誌 Vol.26, No.1, 87-91, 2017

症例報告

会陰浸潤した直腸癌に対してMohsペーストを使用し,症状緩和が得られた1例

仙台赤十字病院 緩和ケアチーム,看護部

小林 照忠  及川 京子  黒川 咲子
堤  栄二  土井 陽子  伊藤 綾子
柏崎 陽子  鎌田さおり

Mohs Paste Treatment for Advanced Rectal Cancer with Perineal Invasion;
Report of a Case

Palliative Care Team, *Department of Nursing, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Terutada KOBAYASHI, Kyoko OIKAWA, Sakiko KUROKAWA, Eiji TSUTSUMI,
Yoko DOI, Ayako ITOH, Yoko KASHIWAZAKI and Saori KAMADA

要旨

近年,皮膚癌や乳癌などの体表部腫瘍に伴う症状緩和を目的にMohsペーストと呼ばれる塩化亜鉛を含む軟膏が用いられ,その有用性が報告されている.今回われわれは,直腸癌の会陰浸潤に対して,Mohsペーストを使用した症例を経験した.症例は78歳の女性で, SMONのために下半身が麻痺していた.直腸癌・直腸膣瘻の診断で入院したが,手術,放射線などの治療を拒否した.入院時は会陰部の皮下硬結として触れた腫瘍が,次第に増大して会陰皮膚へ浸潤し,隆起,突出して出血,浸出液等を伴った.症状緩和を目的にMohsペースト処置を行い,腫瘍の隆起が無くなり,症状が緩和された.1.5か月間に計7回のMohsペースト処置を行い,処置終了から2.5か月後に原癌死されたが,症状の再燃なく経過した.本症例においてもMohsペーストは有用であったが,工夫すべき点もあり,改善して今後の症例に生かしたい.


Key words:Mohsペースト,直腸癌,会陰浸潤