仙台赤十字病医誌 Vol.26, No.1, 77-81, 2017

症例報告

正期産児として出生し,日齢6で呼吸障害を呈した新生児特発性乳糜胸の一例

仙台赤十字病院 総合周産期母子医療センター新生児科

千葉 圭悟  宮副 貴光  佐藤 智樹
三条 雅敏  千葉 洋夫  高橋 立子

A Term Baby with Idiopathic Chylothorax Presented Breathing Disorder at Age 6 on a Day

Neonatal Intensive Care Unit in Perinatal Center, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Keigo CHIBA, Takamitsu MIYAZOE, Tomoki SATO, Masatoshi SANJO,
Hiroo CHIBA and Ritsuko TAKAHASHI

要旨

乳糜胸は新生児の胸水貯留の原因として考慮されるべき病態である.今回我々は院外にて出生し,日齢6に呼吸障害を呈し当院に搬送された後,乳糜胸と診断された一例を経験した.胸部X線写真および胸部超音波検査により,左胸腔に著明な胸水貯留を認めたため,胸腔穿刺,吸引をおこない黄白色の液体が140 ml吸引された.胸水を検査した結果,中性脂肪とリンパ球の増多を認め,特発性乳糜胸と診断した.胸腔ドレーンを留置のうえ,持続的な胸水吸引を開始し,絶飲食として経静脈的栄養(total parenteral nutrition:TPN)をおこなった.呼吸状態は安定し,入院後8日目からmedium-chain triglyceride(MCT)ミルクにて経口栄養を開始した.その後,排液量は徐々に減少し,入院後12日目にドレーンを抜去した.入院後24日目にはMCTミルクを中止し,完全母乳・普通ミルク栄養となり,入院後33日目に退院した.


Key words:乳糜胸,胸腔穿刺,MCTミルク