仙台赤十字病医誌　Vol.26, No.1, 41-47, 2017

症例報告

ステロイド治療が著効した直腸間膜脂肪織炎の1例

仙台赤十字病院　消化器内科

大楽　尚弘　　大森　信弥　　矢口　　圭
アデル・バドラン　　菅野　　厚

A Case of Rectal Mesenteric Panniculitis Successfully Treated with Steriod Therapy

Department of Gastroenterology, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Naohiro DAIRAKU, Shinya OOMORI, Kei YAGUCHI,
Adel BADRAN and Atsushi KANNO

要旨

症例は50歳，女性．高熱・頻回の下痢・下腹部痛・頭痛・嘔気のため当院紹介受診．検査所見で炎症反応上昇を認め，腹部CTで直腸にびまん性壁肥厚と周囲の脂肪織濃度の上昇を認めた．絶食と抗生剤投与では症状の改善はなく，CTを再検したところ直腸周囲の脂肪織濃度はさらに上昇していた．MRIおよび下部消化管内視鏡検査を行い，臨床所見から直腸間膜脂肪織炎と診断した．第5病日よりプレドニゾロン投与を開始したところ著効し，速やかに症状は消失した．ステロイドを漸減し経過は良好で第11病日に退院となった．その後外来でステロイドは漸減，第19病日に中止としたが再発徴候なく外来通院中である．直腸間膜脂肪織炎と診断しステロイド治療を行い著効した1例を経験したので，文献的考察を加え報告する．

Key words:直腸，腸間膜脂肪織炎，ステロイド治療