仙台赤十字病医誌 Vol.26, No.1, 3-16, 2017
総説
H.pylori診療の現状と今後の展望
仙台赤十字病院 消化器内科
大楽 尚弘
Current Status and Perspectives of the Clinical Management of H.pylori Infection
Department of Gastroenterology, Japanese Red Cross Sendai Hospital
Naohiro DAIRAKU
要旨
Helicobacter pylori (H.pylori)が1983年に報告されて以来,上部消化管を中心とした消化器疾患診療は劇的な変化を遂げた.胃・十二指腸潰瘍は除菌療法によって再発が抑制され,H.pyloriと様々な疾患との関連が次々と明らかとなった.さらに,世界でも有数の胃がん大国であるわが国は,H.pyloriと胃がんとの関連について数多くの基礎研究や臨床研究を世界に向けて発信してきた.2013年2月には「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対する除菌療法が保険適用となり,胃がんに対して一次予防を行う時代になっている.除菌療法が積極的に行われている現状において,H.pyloriの診断と治療に対する正しい知識を持って診療にあたることは重要である.近年では,耐性菌の増加による除菌率の低下や,除菌後の胃がん,除菌後の疾病構造の変化などの課題が残されており,早急な対策と今後のさらなる研究が期待される.
Key words:H.pylori,除菌療法,胃がん