仙台赤十字病医誌 Vol.26, No.1, 1-2, 2017

巻頭言

院内医学雑誌のやくめ

仙台赤十字病院前院長

桃野  哲

要旨

今年も仙台赤十字病院医学雑誌をお届けすることが出来ました.本誌の発行を26巻まで継続出来たのは,診療などで忙しいなか,論文を投稿いただいた皆さんと,歴代の編集長や編集委員諸兄の協力と努力のおかげと感謝しております.有難うございました.
 第1巻の巻頭言では当時の佐藤壽雄院長が「教育の無い病院は一流でない」というWilliam Oslerの語録を引用し,患者に対して医師は良質の医療を行う義務がある.医師は医学一般の,または専門家としての現状における医学の水準をもって診療に当たらねばならない.中略…….医師は絶えず研修を続け,現在の医学水準に追いつくように,それを保つように努力をしなければならない.病院としても教育研修の体制を確立する必要がある.そのために,原著,症例報告,総説をそろえた院内医学雑誌を発刊すると記しています.本誌では第1巻から,原著,症例報告,総説をそろえて医学雑誌としての体裁を整え,最近では医師以外の院内の各職種からの投稿もあって,幅広い充実した内容になってきています.
 最近,各学会誌は勿論,市販の医学雑誌でも症例報告や臨床統計のスペースは狭まったり,無くなってきています.そこで,研修医,若手医師からの症例報告,看護師,病院で働く多職種の皆さんが,研究し発表した内容をまとめた論文を投稿しやすくて,掲載へのハードルも高くない院内医学雑誌は,存在価値を増してきています.私は全論文を査読していますが,規定の倍ページで投稿した著者には,繰り返しを避け論点をシンプルにして,図表の説明は簡潔に,図表は説明しやすく作成をと指示をして,発表の方法を勉強してもらっています.
 若手が,医師として経験した患者さんの疾病について知識を得ながら,指導医のもとで診断や治療が適正だったかなどを振りかえり,症例報告をまとめることは,臨床能力を高めて伸ばす第一歩と考えます.かつて,私も当院で治療した大腸癌症例を原著論文「大腸癌手術症例の臨床病理学的検討」にまとめ,さらに胃癌や乳癌の治療成績を臨床統計として投稿し,本誌のバックナンバーに収載されています.私は,癌患者さんへの術前ICで,自院の臨床データを癌研のそれなどと比較しながら,説明に使用していました.
 これまで,病院長として第13巻から本誌までの巻頭言を担当しましたが,この3月で定年退職になりますので今回が最後になります.これからも本誌の発行は継続されますので宜しくお願いします.有難うございました.