仙台赤十字病医誌　Vol.25, No.1, 37-42, 2016

原著

便失禁診療の現状と課題
─ 仙骨神経刺激療法の将来 ─

仙台赤十字病院　外科，＊看護部

舟山　裕士　　大越　崇彦　　小林　照忠
金子　直征　　深町　　伸　　鈴木　秀幸
伊藤　綾子＊

Present Status and Future Problems in the Management of Fecal Incontinence:
Perspectives of Sacral Nerve Modulation Therapy

Department of Surgery and *Department of Nursing, Sendai Red Cross Hospital

Yuji FUNAYAMA, Takahiko OOGOSHI, Terutada KOBAYASHI, Naomasa KANEKO,
Shin FUKAMACHI, Hideyuki SUZUKI and Ayako ITOH*

要旨

2015年1月より2016年2月までに便失禁を主訴に当院外科，肛門外来を訪れた患者29例について検討した．男性は10名，女性は19名で，年齢は76.5（52-91）歳（中央値，最小値-最大値）であった．これらについて薬物治療，骨盤底筋訓練などの保存的治療，外科的治療として仙骨神経刺激療法を行った．薬物治療としては，ポリカルボフィルカルシウム単独治療での有効率は62%で，ポリカルボフィルカルシウムとロペラミドの併用では75%であった．骨盤底筋訓練を行った5例中4例では回数，漏れの量ともに改善し，肛門内圧でも改善がみられた．外科的治療としては，大腸全摘・回腸肛門吻合術後の60代女性に対して仙骨神経刺激療法を行った。3か月経過後の時点で排便回数，漏便ともに改善し快適な生活を送っている．

Key words:便失禁，仙骨神経刺激療法，高齢者，肛門内圧測定，肛門超音波検査