仙台赤十字病医誌　Vol.25, No.1, 31-36, 2016

原著

当科における消化性潰瘍穿孔手術例の検討

仙台赤十字病院　外科

小林　照忠　　鈴木　秀幸　　金子　直征
深町　　伸　　大越　崇彦　　舟山　裕士

Analysis of Operated Cases for Perforated Gastric and Duodenal Ulcer

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Terutada KOBAYASHI, Hideyuki SUZUKI, Naoyuki KANEKO,
Shin FUKAMACHI, Takahiko OOGOSHI and Yuji FUNAYAMA

要旨

過去12年間の当科での消化性潰瘍穿孔手術例について検討した．胃潰瘍（以下GU）が8例，十二指腸潰瘍（以下DU）が27例で，DUはGUに比べて男性，若年者に多かった．腹腔鏡手術27例中6例が開腹移行し，腹腔鏡手術完遂率はGUで有意に低下した．腹腔鏡手術完遂例の手術時間は開腹手術に対して差がなかったが，開腹移行例では有意に延長した．GUとDUでは術後経過や合併症に有意差はなかった． 穿孔部閉鎖を行った32例を大網被覆の有無により分類すると，大網被覆を行わなかった症例では手術部位感染を含めた術後合併症が多かった．消化性潰瘍穿孔に対する外科治療においては，まず腹腔鏡手術にて腹腔内を観察し，胃穿孔の場合は開腹移行も考慮しつつ大網充填を，十二指腸穿孔に対しては腹腔鏡下穿孔部単純閉鎖に加え，大網被覆を付加すべきことが示唆された．

Key words:消化性潰瘍穿孔，胃潰瘍穿孔，十二指腸穿孔，腹腔鏡手術，大網被覆術