仙台赤十字病医誌 Vol.24, No.1, 99-102, 2015
症例報告
全身浮腫を呈した慢性腎不全に対しトルバプタン投与が有効であった1例
仙台赤十字病院 腎臓内科
徐 東傑 杉本 理絵 山口 裕二
A Case of Chronic Renal Failure with Generalized Edema in which Tolvaptan Was Effective
Department of Nephrology, Japanese Red Cross Sendai Hospital
Touketsu JO, Rie SUGIMOTO and Yuji YAMAGUCHI
要旨
症例は81歳,男性.高血圧症,慢性腎不全,脳梗塞の既往がある.脳梗塞にて他院入院中にループ利尿薬抵抗性の浮腫および意識レベル低下が認められ,当院へ紹介入院.入院時全身浮腫著明であった.フロセミドとアルブミンの併用により一時浮腫は改善したが,感染を契機に再び尿量が減少し,腎機能低下と肺水腫をきたし,呼吸状態不良となった.トルバプタン7.5 mgを1日,その翌日より15 mgを3日間投与したところ,尿量が増加し,呼吸状態および浮腫の改善を認めた.腎機能は増悪前のレベルまで回復した.トルバプタン投与終了後も呼吸不全や浮腫の増悪はみられなかった.近年利尿薬抵抗性心不全に対し水利尿薬であるバソプレシンV2受容体拮抗薬の追加投与の有効性が報告されている.本症例ではトルバプタン少量短期投与により,肺うっ血および全身浮腫が改善して透析回避が可能となった.本薬の慢性腎不全における有効性が期待できると考えられた.
Key words:トルバプタン,慢性腎不全,全身浮腫,急性肺水腫