仙台赤十字病医誌 Vol.24, No.1, 87-91, 2015

症例報告

心タンポナーデで発症した早期胃癌による癌性心膜炎の1例

仙台赤十字病院 外科

金子 直征  小林 照忠  舟山 裕士
大越 崇彦  深町  伸  鈴木 秀幸

A Case of Carcinomatosa Pericarditis from Early Gastric Cancer with Cardiac Tamponade

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Naoyuki KANEKO, Terutada KOBAYASHI, Yuji FUNAYAMA, Takahiko OOGOSHI, Shin FUKAMACHI and Hideyuki SUZUKI

要旨

症例は62歳の男性.早期胃癌に対して幽門側胃切除を施行し,外来通院中であった.術後5年6ヵ月後から倦怠感,息切れが出現し,症状が悪化したために当科を受診した.胸部レントゲン写真では心胸郭比の上昇と超音波検査では心嚢液の貯留を認め,心タンポナーデと診断した.他院にて心嚢ドレナージを行い,血性心嚢液が吸引され細胞診の結果はadenocarcinoma (class V)であった.全身CT検査にて原発巣を指摘できず,細胞診の結果でも胃癌の転移で矛盾しない所見であったため,早期胃癌の心膜転移と診断した.2週間後に当科に転院したが,全身状態が徐々に悪化し,発症から1ヵ月半後に死亡した.癌性心膜炎はまれな転移形式であるが,重篤で予後不良な病態である.今回我々は,早期胃癌術後に心タンポナーデを契機に発見された癌性心膜炎の1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.


Key words:早期胃癌,癌性心膜炎,心タンポナーデ