仙台赤十字病医誌　Vol.24, No.1, 71-76, 2015

症例報告

IgG4関連後腹膜線維症の1例

仙台赤十字病院　泌尿器科

當麻　武信　　太田　章三

A Case of IgG4-Related Retroperitoneal Fibrosis

Department of Urology, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Takenobu TAIMA and Shozo OTA

要旨

症例は79歳男性．既往歴は糖尿病．内科通院中，排尿困難と腎機能の悪化のため当科紹介受診．腹部エコーで右水腎症を認めた．CTで右水腎症および尿管周囲の肥厚所見があり，尿管癌の浸潤または後腹膜脂肪組織炎と考えられた．血液生化学検査では，血清Cr 1.13mg/dl，CRP 2.34mg/dl，IgG4 154.0mg/dl（正常値4.8-135）と高値を示したことから，IgG4関連後腹膜線維症と診断し，プレドニン30mg/日から投与開始，漸減した．治療開始3ヶ月後CTで右水腎症は消失，右後腹膜の軟部影は縮小，血清Cr 0.92mg/dl，IgG4 54.5mg/dlと正常化した．後腹膜線維症は後腹膜の線維組織に慢性炎症性増殖が生じた状態である．男女比3:1で特発性が7割を占める．近年一部はIgG4関連疾患の一病変と認識されるようになった．適切な診断と治療を行うことにより，早期に改善することが可能であることから，認識しておくべき疾患である．

Key words:水腎症，IgG4関連疾患，後腹膜線維症