仙台赤十字病医誌 Vol.24, No.1, 67-70, 2015

症例報告

輸血後にたこつぼ型心筋症を発症したと考えられる肺大細胞癌の1例

仙台赤十字病院 呼吸器内科,*循環器内科

高橋 秀徳  三木  誠  清水川 稔
井上 大輔  杉村 彰彦*  大橋 潤子*

Blood Transfusion-Induced Takotsubo Cardiomyopathy

Department of Respiratory Medicine, *Department of Cardiovascular Medicine, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Hidenori TAKAHASHI, Makoto MIKI, Minoru SHIMIZUKAWA, Daisuke INOUE, Akihiko SUGIMURA* and Junko OHASI*

要旨

症例は77歳男性.既往に高血圧,慢性腎不全,心房細動による慢性心不全がある.右肺大細胞癌に対しゲムシタビン+ビノレルビンによる化学療法を2コース施行し,Hb減少Grade 3,白血球減少Grade 2のほかは大きな有害事象なく経過した.貧血に対して赤血球濃厚液輸血中に血圧上昇(223/139mmHg)と頻脈発作(117/min)及び喘鳴が出現し,気管内挿管を要した.心エコーでは翌朝に心尖部の局所的壁運動低下を認めたが1週間後には正常化した.心電図では巨大陰性T波を認めたが経時的に改善し3ヶ月後に陽転を認めた.BNPは一過性に最大1,562pg/mlまで上昇したがCK-MBの有意な上昇はみられなかった.腎不全のため冠動脈造影検査は未施行であるが経過からたこつぼ型心筋症と診断した.輸血を契機として発症した例は報告が少なく,本症例の経過や発症の要因も示唆に富むことから文献的考察を交え報告する.


Key words:たこつぼ型心筋症,心不全,輸血副作用,肺大細胞癌,化学療法