仙台赤十字病医誌　Vol.24, No.1, 3-9, 2015

総説

腸管粘膜の機能と構造── その破綻と腸管粘膜疾患 ──

仙台赤十字病院　病理　非常勤医師東北大学　名誉教授

名倉　　宏

Function and Structure of the Intestinal Mucosa:Their Disorders and Intestinal Mucosal Diseases

Department of Pathology, Japanese Red Cross Sendai Hospital and Department of Pathology, Tohoku University

Hiroshi NAGURA

要旨

腸管粘膜は，皮膚ともに生体の内外環境を境界し，生体の様々な機能と構造の恒常性維持に主要な役割を果たしている組織である．腸管粘膜は生体内外からの様々な微生物や抗原物質の侵襲に絶えず曝されているが，そうした環境下にあって腸管粘膜は食物の消化，吸収，排泄および代謝に主要な役割を果たし，同時に生体の免疫機能や神経内分泌機能と密接な連関の許で生命活動の恒常性維持に重要な役割を演じている．
　その様々な働きの破綻が腸管粘膜疾患の主要な病因をなしている．本稿では筆者の研究を含め，その一端を紹介し，腸管粘膜での生体における役割の多彩性と重要性の一端を提示したい．

Key words:Mucosal immunity, Gut hormone, Leptin, Inflammatory bowel disease, Irritable bowel syndrome