仙台赤十字病医誌 Vol.22, No.1, 95-99, 2013

症例報告

尿管子宮内膜症の1例

仙台赤十字病院 泌尿器科

當麻 武信  太田 章三

A Case of Ureteral Endometriosis

Department of Urology, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Takenobu TAIMA and Shozo OTA

要旨

症例は37歳女性.右側腹部痛を主訴に当科を受診した.受診時身体所見,血液生化学検査,検尿,CA125に異常は認めず.CT・MRIで,右水腎症と骨盤内尿管に造影効果のある陰影を認めた.右分腎尿細胞診は陰性.浸潤性尿管癌,転移性悪性腫瘍,良性腫瘍を鑑別診断とし,病巣摘除,組織診断,疼痛緩和の為,手術の方針とした.術中迅速診断で子宮内膜症の診断であったため,尿管部分切除術+尿管膀胱新吻合術(Psoas hitch法)を施行した.子宮内膜症は異所性に子宮内膜が発生した疾患で,10%前後の女性に発症する.そのうち尿管に発生するのは約0.2%である.発症時平均年齢は37.1歳で,側腹部痛や下腹部痛で発症し,月経と無関係のことが多い.画像診断で悪性腫瘍との鑑別は困難で,殆どが摘出標本の組織診断で確定する.治療法には手術療法とホルモン療法がある.尿管子宮内膜症は水腎症の原因疾患の一つとして念頭におく必要がある.


Key words:水腎症,尿管,子宮内膜症