仙台赤十字病医誌　Vol.22, No.1, 89-94, 2013

症例報告

帝王切開瘢痕部妊娠の保存的治療後，妊娠・分娩に至った一例

仙台赤十字病院　産婦人科

横山　絵美　　武山　陽一　　佐藤　尚明
齋藤　美帆　　太田　恭子　　中里　浩樹
鈴木　久也　　谷川原真吾

A Case of Successful Pregnancy and Delivery after the Conservative Treatment of Cesarean Scar Pregnancy

Department of Obstetrics and Gynecology, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Emi YOKOYAMA, Yoichi TAKEYAMA, Naoaki SATO, Miho SAITO, Kyoko OTA, Hiroki NAKASATO, Hisaya SUZUKI and Shingo TANIGAWARA

要旨

帝王切開瘢痕部妊娠は稀な疾患であり，帝王切開瘢痕部妊娠治療後の妊娠・分娩に関する報告は少ない．今回我々は帝王切開瘢痕部妊娠の保存的治療後，妊娠・分娩に至った1症例を経験したので報告する．症例は33歳の女性で帝王切開瘢痕部妊娠に対してメトトレキセート投与，子宮動脈塞栓術後に子宮内容除去術を行い，治療6ヶ月後に正常妊娠をした．妊婦健診にて経過観察していたが，頚管長短縮を認めたため，妊娠24週より入院管理とした．子宮創部が非常に薄く子宮破裂のリスクが高いことから，妊娠28週で帝王切開分娩とした．また，瘢痕部の修復は困難であることが予想され，これ以上の挙児希望がないことから同時に子宮摘出術も施行した．病理学的検査では真性癒着胎盤および子宮穿孔を認めた．本例では母子ともに救命し得たが，帝王切開瘢痕部妊娠治療後の妊娠の可否について，更なる検討を要すると考えられた．

Key words:帝王切開瘢痕部妊娠，保存的治療，癒着胎盤，子宮破裂