仙台赤十字病医誌　Vol.22, No.1, 83-87, 2013

症例報告

検診を契機に発見され，直腸粘膜脱症候群との鑑別を要したPeutz-Jeghers型ポリープの1例

仙台赤十字病院　消化器内科，＊外科

大森　信弥　　川村　雄剛　　佐藤　俊裕
菅野　　厚　　小林　照忠＊

A Case of Peutz-Jeghers Type Polyp, Needed Discrimination from Mucosal Prolapse Syndrome and Found by Medical Examination

Department of Gastroenterology, ＊Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Shinya OOMORI, Yugo KAWAMURA, Toshihiro SATO, Atsushi KANNO and Terutada KOBAYASHI＊

要旨

検診を契機に発見され，直腸粘膜脱症候群（MPS）との鑑別を要したPeutz-Jeghers 型ポリープ（PJP）と診断した症例を経験したので報告する．症例は46歳男性．検診で便潜血反応陽性を指摘され，大腸内視鏡検査を施行したところ，直腸に径1 cm強の亜有形性隆起性病変を認めた．辺縁は凹凸が目立ち，表面にはクレバス状の粘膜欠損部が散見された．拡大内視鏡所見では，II型ないしはIV型類似のpit patternを認めた．腫瘍の内視鏡生検を繰り返し行った結果，fibromuscular obliterationを伴ったMPSを示唆する所見ではあったが，診断的治療を目的として経肛門的切除術が施行された．最終的な病理組織診断はPJPだった．生検診断上，PJPとMPSは時として類似した病理組織像を呈する可能性がある．直腸に生じた隆起性病変で，生検においてfibromuscular obliteration を示唆する所見があった場合でも，MPSのみではなく直腸PJPないしPJPに併発したMPS様変化である可能性も念頭に置いて総合的な診断をすべきと考えられた．

Key words:Peutz-Jeghers 型ポリープ，直腸粘膜脱症候群，検診