仙台赤十字病医誌　Vol.22, No.1, 77-81, 2013

症例報告

腹腔鏡下天蓋切除術を施行した感染性肝嚢胞の2例

仙台赤十字病院　外科

深町　　伸　　中川　国利　　橋本　知実
鈴木　秀幸　　高舘　達之　　小林　照忠
鈴木　幸正

Two Cases of Infected Liver Cyst to Which Laparoscopic Dome Resection were Successful

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Shin FUKAMACHI, Kunitoshi NAKAGAWA, Tomomi HASHIMOTO, Hideyuki SUZUKI, Tatsuyuki TAKADATE, Terutada KOBAYASHI and Yukimasa SUZUKI

要旨

肝嚢胞は通常は無症状で経過し治療を要しないが，ごく稀に感染を来すことがある．今回われわれは，腹腔鏡下天蓋切除術で治癒できた感染性肝嚢胞症例2例を経験したので報告する．症例1は85歳の女性で，右上腹部痛を主訴として来院した．腹部超音波検査やCT検査で感染性肝嚢胞および急性胆嚢炎と診断し，腹腔鏡下に胆嚢摘出を伴う天蓋切除術を施行した．嚢胞は19.8×14.5 cm大で，著明な炎症所見を呈していたが，細菌は検出されなかった．症例2は67歳の女性で，発熱を伴う右上腹部痛を主訴として来院した．感染性肝嚢胞と術前診断し，腹腔鏡下に天蓋切除術を施行した．嚢胞は12.7×9.8 cm大で，著明な炎症所見を呈し，細菌検査ではKlebsiellaが検出された．術後経過はいずれも良好であった．感染性肝嚢胞に対する腹腔鏡下天蓋切除術はドレナージ効果が著明で根治性も高く，大変有用な治療法と考える．

Key words:感染性肝嚢胞，腹腔鏡下肝嚢胞天蓋切除術，胆道感染