仙台赤十字病医誌　Vol.22, No.1, 71-75, 2013

症例報告

腹腔鏡下に摘出した特発性後腹膜血腫の1例

仙台赤十字病院　外科

鈴木　秀幸　　中川　国利　　橋本　知実
高舘　達之　　深町　　伸　　小林　照忠
鈴木　幸正

A Case of Laparoscopic Removed Idiopathic Retroperitoneal Hematoma

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Hideyuki SUZUKI, Kunitoshi NAKAGAWA, Tomomi HASHIMOTO, Tatsuyuki TAKADATE, Shin FUKAMACHI, Terutada KOBAYASHI and Yukimasa SUZUKI

要旨

症例は50歳の男性で，健診で胆嚢結石を指摘され，手術を目的に当科を受診した．特に症状はなく，腹部外傷の既往歴も認めなかった．腹部超音波検査では，胆嚢結石および肝臓と右腎臓との間に径4 cm大の境界明瞭な腫瘤を認めた．また腫瘤はCT検査では下大静脈を腹側へ，さらに右副腎を頭側へ圧排していた．以上から，胆嚢結石症および後腹膜腫瘍と術前診断した．胆嚢および後腹膜腫瘤の摘出術を勧めたが，胆嚢摘出術のみを希望したため腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した．その後，手術から1か月半後に後腹膜腫瘍摘出術を希望したため，腹腔鏡下に摘出した．腫瘤は表面平滑で，弾性硬であった．組織学的には全周性に厚い線維性被膜に包まれ，内部は血液と無構造物質からなり，血腫と診断した．組織学的診断が困難な後腹膜腫瘤では，腹腔鏡下摘出による組織学的検討は侵襲が少なく，有用な検査および治療法である．

Key words:特発性後腹膜血腫，腹腔鏡下手術，後腹膜腫瘤，後腹膜腫瘍