仙台赤十字病医誌　Vol.21, No.1, 43-46, 2012

症例報告

腹腔鏡下胆嚢摘出時に判明した副肝の1例

仙台赤十字病院　外科

月館　久勝　　中川　国利　　深町　　伸
小川　　仁　　小林　照忠　　遠藤　公人
鈴木　幸正

A Case of Ectopic Liver on the Gallbladder Wall Found on Laparoscopic Cholecystectomy

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Hisakatsu TSUKIDATE, Kunitoshi NAKAGAWA, Shin FUKAMACHI, Hitoshi OGAWA, Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO and Yukimasa SUZUKI

要旨

患者は53歳の女性で，検診での腹部超音波検査で胆嚢壁の限局性肥厚を指摘された。精査目的にて当科を受診し，腹部CT検査，DIC-CT検査，MRCP検査などの画像検査で，胆嚢体部の限局性壁肥厚と胆嚢結石を認めた。胆嚢結石を伴う腺筋症と術前診断したが，悪性疾患も否定できないため，腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。術中，胆嚢体部の漿膜面に肝臓と同じ赤褐色で，10×5mm大の腫瘤を認めた。また胆嚢体部に限局性壁肥厚を認め，胆嚢底部に2個の結石が存在した。病理学的検討では，胆嚢体部漿膜面に存在した腫瘤はグリソン鞘を有する正常肝臓組織で，副肝と診断した。また胆嚢体部の壁肥厚は，腺筋症であった。副肝は本邦では約90例が報告されているに過ぎない稀な疾患である。また腫瘤が小さいため術前診断されずに，自験例のように他疾患の手術時に診断される例が多い。

Key words: 副肝，胆嚢腫瘍，腹腔鏡下胆嚢摘出術