仙台赤十字病医誌 Vol.21, No.1, 33-37, 2012

症例報告

腹腔鏡下胆嚢摘出直後に発症した感染性肝嚢胞の1例

仙台赤十字病院 外科

深町  伸  中川 国利  月館 久勝
小川  仁  小林 照忠  遠藤 公人
鈴木 幸正

A Case of Infected Liver Cyst Following Laparoscopic Cholecystectomy

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Shin FUKAMACHI, Kunitoshi NAKAGAWA, Hisakatsu TSUKIDATE, Hitoshi OGAWA, Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO and Yukimasa SUZUKI

要旨

肝嚢胞は通常は無症状で経過するが,ごく稀に感染を来すことがある。今回われわれは,腹腔鏡下胆嚢摘出術の術直後に感染性肝嚢胞を来した症例を経験したので報告する。症例は78歳の女性で,胆嚢結石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。手術翌日から40°C台の高熱が続き,抗生剤Cephazolinを持続投与した。しかし,発熱や右上腹部痛が持続し,術後7日目に超音波誘導下に感染性肝嚢胞を穿刺した。白色膿性の排液20mlを吸引したため,ドレーンを留置して生理食塩水で連日洗浄した。排液の細菌検査では,Klebsiella pneumoniaeが検出された。ドレナージ翌日には36°C台に下熱し,8日目にドレーンを抜去し,10日目に退院した。腹腔鏡下胆嚢摘出術の術直後には,ごく稀ながら感染性肝嚢胞を来すことがある。また感染性肝嚢胞に対する治療として,超音波誘導下肝嚢胞ドレナージは大変有用であった。


Key words: 感染性肝嚢胞,腹腔鏡下胆嚢摘出術,超音波誘導下肝嚢胞ドレナージ