仙台赤十字病医誌　Vol.21, No.1, 27-32, 2012

症例報告

妊娠初期の不規則性抗体スクリーニングでは陰性であった，非Rh（D）不適合による胎児·新生児溶血性疾患の2例

仙台赤十字病院総合周産期母子医療センターNICU

今井　香織　　鈴木　　大　　曽木　千純
鈴木　　信　　三条　雅敏　　千葉　洋夫
高橋　立子　　山田　雅明

Two Cases of Hemolytic Disease of the Fetus and Newborn Caused by Non-D Antibodies Undetected at First-Trimester Screening

Department of Neonatal Intensive Care Unit, Perinatal Medical Center, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kaori IMAI, Dai SUZUKI, Tisumi SOGI, Nobu SUZUKI, Masatoshi SANJO, Hiroo CHIBA, Ritsuko TAKAHASHI and Masaaki YAMADA

要旨

我々は非Rh（D）不適合による胎児·新生児溶血性疾患を2例経験した。妊娠初期の不規則性抗体スクリーニングが陰性で，出産後の母体血から，1例は抗E抗体，他方は抗Jr^a抗体が検出された。2例とも早発黄疸を発症し，多方向の光線療法とガンマグロブリン大量療法を併用し交換輸血を回避した。しかし急性期を過ぎ貧血が進行し，抗E抗体陽性例に赤血球輸血を行い，抗Jr^a抗体陽性例にエリスロポエチン投与を行った。早発黄疸をきたした児が直接クームス試験陽性の場合，妊娠初期の不規則性抗体スクリーニングが陰性であっても，不規則性抗体の再検，同定が必要である。また，交換輸血が回避できても，患児血液中の抗体が早期に陰性化しない場合，貧血が遷延する可能性があり，フォローアップが必要である。

Key words: 胎児·新生児溶血性疾患（HDFN），不規則性抗体スクリーニング，血液型不適合妊娠，抗E抗体，抗Jr^a抗体