仙台赤十字病医誌　Vol.21, No.1, 9-15, 2012

原著

成人における腸膣瘻症例の検討

仙台赤十字病院　外科

中川　国利　　月館　久勝　　深町　　伸
小川　　仁　　小林　照忠　　遠藤　公人
鈴木　幸正

Analysis of Adult Enterovaginal Fistulas

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kunitoshi NAKAGAWA, Hisakatsu TSUKIDATE, Shin FUKAMACHI, Hitoshi OGAWA, Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO and Yukimasa SUZUKI

要旨

過去23年間に当科で経験した成人腸膣瘻症例13例を対象として，診断および治療を中心に検討した。年齢は平均55.0歳で，主訴は膣からの糞便排泄であった。腸膣瘻部位は直腸膣瘻10例およびS状結腸膣瘻3例で，病因は分娩時の会陰裂傷5例，結腸憩室症3例，手術に伴う合併症3例および進行期直腸癌2例であった。治療は，会陰裂傷例では経膣的瘻孔閉鎖術を，憩室症例ではS状結腸切除を伴う経膣的瘻孔閉鎖術を施行し，腸膣瘻の再発は認めなかった。一方，手術に伴う合併症2例では経膣的瘻孔閉鎖術を施行したが，内1例では再発を来たして経仙骨的瘻孔閉鎖術や開腹下瘻孔閉鎖術を施行した。また手術に伴う合併症1例および全身状態不良な進行期直腸癌2例の計3例では，人工肛門を造設した。腸膣瘻の診断は容易であるが，治療では原疾患の良悪性，瘻孔の位置や大きさ，炎症の程度などに応じた手術を行う必要がある。

Key words: 直腸膣瘻，結腸膣瘻，直腸癌，結腸憩室症，会陰裂傷