仙台赤十字病医誌　Vol.21, No.1, 3-8, 2012

原著

腹腔鏡下虫垂切除時に判明した虫垂憩室症例の検討

仙台赤十字病院　外科

中川　国利　　月館　久勝　　深町　　伸
小川　　仁　　小林　照忠　　遠藤　公人
鈴木　幸正

A Study on Appendiceal Diverticulum Diagnosed by Laparoscopic Appendectomy

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kunitoshi NAKAGAWA, Hisakatsu TSUKIDATE, Shin FUKAMACHI, Hitoshi OGAWA, Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO and Yukimasa SUZUKI

要旨

腹腔鏡下虫垂切除時に判明した虫垂憩室症例5例を対象として検討した。全例が男性で，平均年齢は51.2歳であった。主訴は全例が右下腹部痛で，術前診断は急性虫垂炎4例および虫垂粘液腫1例であった。腹腔鏡下に観察すると，虫垂に憩室3例，著明な炎症4例および棍棒状腫大1例を認めた。切除標本では，全例で憩室を認め，個数は3個が3例，および1個が2例であった。また部位は虫垂間膜側2例および対側3例であった。病理学的には仮性憩室4例および真性憩室1例で，また4例では壊死を呈し，内3例では穿孔や穿通を認めた。また他の1例では粘液腫を合併していた。虫垂憩室の術前診断は困難であり，また虫垂憩室炎は急性虫垂炎と同様な症状や画像所見を呈する。さらに虫垂憩室炎では穿孔や穿通を来しやすいため，切除標本や病理学的検討でも単なる急性虫垂炎と診断される例が多いと思われる。

Key words: 虫垂憩室症，虫垂憩室炎，腹腔鏡下虫垂切除，虫垂粘液腫，虫垂真性憩室