仙台赤十字病医誌 Vol.20, No.1, 77-80, 2011

症例報告

腹腔鏡下開窓術を施行した横隔膜嚢胞の1例

仙台赤十字病院 外科，病理科^*

月館　久勝　　中川　国利　　高橋　祐輔　　深町　　伸
塚本　信和　　小林　照忠　　遠藤　公人　　鈴木　幸正
手塚　文明^＊

A Cyst of the Diaphragm Treated by Laparoscopic Fenestration

Departments of Surgery and ^＊Pathology, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Hisakatsu TSUKIDATE, Kunitoshi NAKAGAWA, Yusuke TAKAHASHI, Shin FUKAMACHI,
Nobukazu TSUKAMOTO, Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO, Yukimasa SUZUKI
and Fumiaki TEZUKA^＊

要旨

腹腔鏡下開窓術を施行した横隔膜嚢胞の1例を経験したので報告する。症例は72歳の女性で，上腹部の違和感を主訴として来院した。腹部超音波検査やCT検査で，横隔膜に接した肝臓S3の部位に5×4 cm大の嚢胞を認めたため，肝嚢胞と術前診断した。腹腔鏡下に観察すると，肝臓の外側区域に接した横隔膜に5×4 cm大の嚢胞が存在した。嚢胞内容液の細胞診では良性であるため，嚢胞壁の一部を切除する開窓術を施行した。組織学的には線維性結合組織で構成された嚢胞で，一部に上皮を伴っていた。横隔膜嚢胞は非常に稀な疾患であり，肝臓や肺に接しているため術前診断は困難とされている。横隔膜嚢胞に対する腹腔鏡下手術は確定診断から治療までを一貫して行うことができ，大変有用な術式であった。

Key words:横隔膜嚢胞，腹腔鏡下横隔膜嚢胞開窓術，腹腔鏡下手術