仙台赤十字病医誌 Vol.20, No.1, 49-54, 2011

原著

腹腔鏡下総胆管切石術における開腹移行例の検討

仙台赤十字病院 外科

中川　国利　　月館　久勝　　高橋　祐輔
深町　　伸　　塚本　信和　　小林　照忠
遠藤　公人　　鈴木　幸正

Conversion to Laparotomy during Laparoscopic Choledocholithotomy

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Kunitoshi NAKAGAWA, Hisakatsu TSUKIDATE, Yusuke TAKAHASHI, Shin FUKAMACHI,
Nobukazu TSUKAMOTO, Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO and Yukimasa SUZUKI

要旨

当科で施行した腹腔鏡下総胆管切石術症例326例を対象として，開腹移行の要因について検討した。なお腹腔鏡下総胆管切石術症例には，急性胆嚢炎93例，胆嚢管閉塞137例，胆嚢腫瘍17例を含んでいた。また154例（47.2%）で，胃切除24回など延べ197回の開腹既往歴を有していた。開腹移行した症例は32例（9.8%）で，要因は癒着剥離困難15例，総胆管結石摘出困難7例，胆管損傷4例および出血，進行期胆嚢癌，機器の不具合が各2例であった。また急性胆嚢炎例では93例中15例（16.1%）で，胆嚢管閉塞例では137例中22例（16.1%）で開腹移行した。腹腔鏡下総胆管切石術は手技に習熟すれば，急性や慢性胆嚢炎例および上腹部開腹既往例を含む，ほぼ全ての総胆管結石例に適応がある。しかし腹腔鏡下に対処できない場合や重篤な偶発症が生じた場合には，開腹手術へ躊躇せずに移行することが大切である。

Key words:総胆管結石症，腹腔鏡下総胆管切石術，開腹移行，胆管損傷