仙台赤十字病医誌 Vol.19, No.1, 65-69, 2010

症例報告

穿孔を来たした好酸球性腸炎の1例

仙台赤十字病院　外科

高原　政利　　鈴木　幸正　　中川　国利
塚本　信和　　深町　　伸　　小林　照忠
遠藤　公人　　小村　俊博　　牧野　　塁

A Case of Eosinophilic Gastroenteritis with Perforation

Department of Surgery, Japanese Red Cross Sendai Hospital

Masatoshi TAKAHARA, Yukimasa SUZUKI, Kunitoshi NAKAGAWA, Nobukazu TSUKAMOTO,
Shin FUKAMACHI, Terutada KOBAYASHI, Kojin ENDO, Toshihiro KOMURA and Rui MAKINO

要旨

症例は54歳女性。腹痛，嘔吐を主訴に近医受診し，腸閉塞疑いにて紹介された。臍周囲部に圧痛を認め，腹部単純X線検査および腹部単純CT検査にて絞扼性腸閉塞を疑い，緊急手術を行った。Treitz靭帯より約250cm肛門側の回腸壁に発赤，肥厚を認め，その7cm口側に小腸の穿孔を認めた。穿孔部を含め，発赤，肥厚した小腸の部分切除術を施行した。病理組織検査で，粘膜下層，固有筋層，漿膜下層に好酸球を中心とする著しい炎症性細胞浸潤を認めた。虫体や虫卵は認めず，好酸球性腸炎と診断した。術後は良好に経過し，ステロイド投与は行わず経過観察中である。手術の既往がなく，腹水の貯留した腸閉塞では，好酸球性腸炎も念頭に置くべきである。また，腹腔鏡による腹腔内の観察は，診断および術式の選択において有効な方法と考えられた。

Key words:好酸球性胃腸炎，腹腔鏡下手術，小腸穿孔